2019年01月29日 公開

自覚を促すネット依存予防教育

第2回国際ギャンブル・ネット依存フォーラム、教育現場からの報告

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 最近は乳児期からスマホやゲームに慣れ親しむ機会が増えており、既に小学生で個人端末を持つ児童も珍しくない。昨年(2018年)には、世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を新たな疾患として認めたばかりだ。では、急速に進む子どもたちの「IT化」がもたらす負の側面については、どのような対策が講じられているのか。教育現場からの報告として、和歌山大学教職大学院の豊田充崇教授が、子どもたちの自覚を促すためのネット依存予防について、「第2回国際ギャンブル・ネット依存フォーラム」(主催:久里浜医療センター)で発表した。

家庭と教育現場が依存症予備軍を救う

 ベビーカーに乗った幼児がスマホを手にする光景は、もはや当たり前になりつつある。親が子どもをあやすためであっても、アプリを使った知育のためであっても、子どもにとっては視力の低下やネット依存、ゲーム障害の将来的なリスクになることを、大人たちは忘れてはいけない。

 ネット依存やゲーム障害を診療する医療機関は、数少ないが存在する。だが、ネットやゲームによるリスクを知らない子どもたちが医療機関を受診しなくてはならなくなる前に、何らかの策を講じることが重要だろう。そのためには、やはり家庭と教育現場での対応が不可欠といえる。

 ところが、豊田教授によると、教育現場で実施されているネット依存対策はあまり効果が期待できる内容ではなく、家庭での独自ルールにも大きなばらつきが見られる。こうした現状では、独自調査で明らかになった多数のネット依存予備軍の子どもたちを救うことは難しい。そこで、「より安全・安心で、社会規範に基づく取り決めの必要性」を感じたという。

家庭やクラス単位でペナルティ付きマイルールを作成

 豊田教授らは、中学生向けにスマホやゲームの使用に関するチェックリスト方式の「誓約書」を作成し、その中で各生徒に即したマイルールを作ることを提案した。利用時間は平日と休日で分け、利用場所(リビング、自室、友人宅、外出先など)や交信相手(家族、親戚、友人、先輩・後輩など)、利用アプリ、課金、写真撮影に至るまで、いじめや犯罪から子どもたちを守る視点も満たした、細かい項目が設定された()。

図. スマホ・ゲーム等利用の『誓約書』検討事項チェックリスト11_2_oyakode_tukurou_netseiyakusyo_2.jpg

 「社会規範に基づく取り決め」のため、ペナルティも設定した。自らチェックを入れたルールが守れなければ、機器の没収やネットワーク利用の禁止など、軽いものから重いものまでさまざまなペナルティの中から自分で決めることができる。この誓約書を導入した中学校では、保護者から多くの賛同や感謝の声が寄せられ、生徒たちの意識や行動にも改善が見られたという。

「メリット・デメリット」を自覚させ、「判断力」を養う

 さらに高校生では、スマホを使うことを客観視させる試みが実施された。豊田教授は「スマホを利用する状況を把握させ、ネット依存による弊害を理解させる目的で、『メリットカード』と『デメリットカード』によるワークショップを実施した」と説明。

 例えば、アンケートに基づいて作成した20枚のメリットカードにはそれぞれ「友達と連絡がとりやすい」「悩みを伝えやすい」「有益な情報が自然に入ってくる」といったプラス面が記されている。一方、20枚のデメリットカードには、「友人関係がわずらわしく感じる」「返事が面倒になる」「勉強の妨げになる」といったマイナス面が記されている。

 これらを各生徒に選ばせ、因果関係のあるメリットとデメリット同士で相対させる。すると、「ほとんどのメリットにはデメリットが含まれる」と気づいた生徒がいたという。あるいは、単独でメリットと呼べるカードはわずか2枚しかなく、それ以外のメリットはデメリットに覆われてしまった。ワークショップを通じて生徒と教師がコミュニケーションを取る中で、生徒自身が「自分のスマホの利用方法を視覚化できた」と豊田教授は振り返る。さらに、啓発用漫マンガも作成し、活用しているという。

 豊田教授は、教育現場において「(スマホやゲーム等を)遠ざけたり、禁止したりすることは"制限"でしかない。子どもたちの"判断力"を、授業中にクラスメイトなど、他者との関わりの中で育成することが重要」と話し、「医療機関に委ねる前に、いかに教育現場で『予防』できるか、予備軍をいかにして抽出し自覚を促せるかを、今後も検討していきたい」と結んだ。

<関連リンク> 「情報モラル指導用教材」(和歌山大学教職大学院・豊田充崇教授提供)

(あなたの健康百科編集部)