2019年01月30日 公開

夫婦以外の精子や卵子、子宮を使った出産をどう思う?

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 不妊に悩むカップルが増加し、日本では出生児の20人に1人が体外受精で生まれている(2015年)。夫婦以外の第三者が関わる妊娠・出産も技術的には可能となったが、倫理的な問題に対する法整備が遅れており、日本産科婦人科学会が自主規制してきた。しかし、不妊に悩むカップルから一定の需要はあり、海外で高額な費用を支払って行うといった例もみられる。不妊治療が増えている今、こういった問題は誰もが身近なテーマとして考えるべき時期にきている。そこで、2018年11月に米国科学雑誌PLOS ONEに掲載された、東京大学医学部附属病院女性外科の平田哲也氏らによる、第三者を介する生殖補助医療に関する国内の意識調査の結果を紹介する。

遺伝上の親と法律上の親が存在し家族関係が複雑に

 第三者を介した生殖補助医療には、妻が妊娠・出産するパターンと、第三者の女性(代理母)が妊娠・出産するパターン(代理懐胎)がある。前者では、夫婦以外の第三者から精子または卵子、あるいは胚(受精卵)を提供してもらい、それによって得られた受精卵を妻の子宮に入れる。精子提供の場合は夫と子供に、卵子提供の場合は妻と子供に、胚提供の場合は夫婦両方と子どもの間に遺伝的なつながりはない。第三者の女性が妊娠・出産する。後者のパターンは妻が病気などで子宮を持たない場合で、夫の精子と妻の卵子から得られた受精卵を、代理母の子宮に移植する。子供は夫婦の遺伝子を受け継ぐが、法律では代理母が母親となる。精子や卵子も第三者という例もある。

  すなわち、生殖医療の進展により、遺伝上の親と法律上の親が異なる例が出現し、それに社会通念や私たちの意識がついていっていないのだ。また、家族関係が複雑化しがちなこれらの生殖補助医療で生まれた子供に、遺伝的ルーツを知らせるべきかどうかという問題がある。子供が自らの出自を知る権利を保障すべきという考え方がある一方、精子や卵子の提供者であること、代理母であることを知られたくない人もいる。

年齢や性別、不妊経験の有無で大きな差

 そこで平田氏らの研究チームが調査を行ったところ、精子や卵子、胚の提供については、社会的に「認めてよい」が全体の36.2%で、「認めるべきでない」を上回った。男女とも不妊経験のない人に比べて、ある人に「認めるべき」という人が多かった。また、50代以上で「認めるべきでない」と回答する人が多かった。代理懐胎については、社会的に「認めるべき」と考える人が40.9%だった。不妊経験のある人は、ない人に比べて男女とも「認めるべき」とする人が多かった。

図1. 第三者を介する生殖補助医療を社会的に認めてよいかどうかについての回等結果

 一方で、回答者自身が他の方法で妊娠できないと仮定した場合、第三者を介した生殖補助医療を行うかどうかについては、どの集団でも「配偶者が望んでも利用しない」という人が半数以上だった。「配偶者が希望すれば行いたい」という人は男性に多く、高齢になるほど少なかった。

図2. 回答者自身が他の方法で妊娠できない場合と仮定した場合に、卵子提供を利用することを望みますか?についての回答結果

 子供が出自を知る権利については、46.3%の人が「認めるべき」と回答した。「認めるべきでない」とした人は50代の男女に多く、また、不妊経験のある人が、ない人に比べて多かった。

図3. 第三者を介する生殖補助医療によって生まれた子供について、「出自を知る権利」を認めるべきかについての回答結果

(図1~3は研究グループの報道資料より作成)

  研究グループは、性別や年齢、不妊経験の有無などが回答に影響する一方、多くの質問に対して「分からない」とする回答が30%以上だったことに着目する。第三者の卵子や子宮を用いた生殖補助医療に一定のニーズがあることから、国内での実施の可否や、うのであればどのような形で進めるか、社会的合意を形成するための知識の提供や議論の活発化が必要だという。そして、こうしたアンケートが法整備やルール作りにつながることを期待している。あなたもいろいろな立場の人と、意見を交わしてみてはいかがだろうか。

【卵子提供、代理懐胎などに関する第三者を介する生殖補助医療と出自を知る権利に対する国内の意識調査概要】
調査実施日:2014年2月
調査方法:webアンケート
調査対象:無作為に抽出した男女
調査人数:2,500人
年齢:20~50代(各年代男女等分、各グループ312人または313人)

(あなたの健康百科編集部)