2019年02月20日 公開

聴力は100歳までもつの?

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 超高齢化が進み、「人生100年時代」を目前にした日本。"健康で長生き"することの大切さが叫ばれる一方で、障壁となるさまざまな病気や障害の実態が浮かび上がってきた。その1つが「老人性難聴」だ。なんと、日本の65歳以上の3人に1人、約1,500万人が難聴に苦しんでいるのだ。しかも、今後さらに難聴で悩む人は増え続け、既に難聴となった人の症状はさらに悪化するという深刻な未来も見えてきた。

 このような中、株式会社日本コクレアが開催した記者説明会で、東京大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授の山岨達也氏が「難聴と人工内耳」をテーマに講演した。これから難聴を語るとき、キーワードは"人工内耳"となりそうだ。

難聴になると認知症のかかりやすさが5倍に

 難聴は大きく分けて"音が伝わらない難聴(伝音難聴)"と"音を感じなくなる難聴(感音難聴)"の2タイプに分かれる。前者は、ほぼ薬や手術で治療できる。しかし、後者の一部は薬で治療できるが、ほとんどは治療法がなく、補聴器などに頼らざるをえないのが現状だ。そして問題の老人性難聴は、後者の代表選手である。

 では、難聴になると、どのように生活が障害されるのか。まず"必要な音が聞こえない"ために、家族や友人とのコミュニケーションが取れなくなったり、交通事故などの危険を察知することが難しくなる。さらに怖いのは、難聴が認知症やうつ病の強力な危険因子であることだ。驚いたことに、山岨氏によると、難聴でない人と比べて、難聴の人は認知症に5倍かかりやすいという。歳を取るにつれ症状は悪化し、補聴器でも聞こえづらくなる。そうなったら、もう"健康で長生き"することはできないのだろうか。そこで登場するキーワードが人工内耳である。

スマートフォンで直接電話音声や音楽をストリーミングできるものも

 あなたは、人工内耳というものをご存じだろうか。一言で表すなら「聴覚障害があり、補聴器の装用効果が不十分な人に対する唯一の聴覚獲得法」である。構造的には、体内に手術で埋め込む「インプラント」と体外装置の「サウンドプロセッサ」から成る。サウンドプロセッサが音を拾い、デジタル信号に変換する。この信号がインプラント内に伝わり再度電気信号に変換され、蝸牛内の電極を介して聴神経を刺激。この刺激が脳で音として認識される()。

図. 人工内耳の聴こえのしくみ

 近年、目覚ましい進歩を遂げているのがサウンドプロセッサ。最新型のNecleus®7サウンドプロセッサ(株式会社日本コクレア)は、スマートフォンから電話音声や音楽を直接ストリーミングできる。また、シーン別自動識別機能が搭載されており、聴取環境からシーン(音楽、風、話し声、雑音下での話し声、静寂下など)を自動的に選択し、最適な「聴こえ」を提供する。

 このように目覚ましい進歩を遂げている人工内耳だが、誰でも利用できるわけではない。適応の基準(小児および成人)が定められており、それを満たす必要がある。

 山岨氏は、人工内耳の注意点として、効果には個人差があることや、装用開始から効果を実感するまでには脳に慣れさせる期間が必要になるなどを挙げた。そして、「わが国では、年間1,000例以上が人工内耳手術を受けているが、国際的に高いとは言えない。装用すればより良い生活を送れる方がまだまだ多くいるはず。今後さらに普及し、1人でも多くの方に人工内耳の恩恵を受けてほしい」と述べている。

(あなたの健康百科編集部)