2019年02月21日 公開

子ども時代の希死念慮があのリスクに

東京医科歯科大の研究で明らかに

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 年間3万人を下回ったことが大きなニュースになるほど自殺者数が多い日本。自殺者の低年齢化も問題視される中、東京医科歯科大学国際健康推進医学分野の森田彩子氏、藤原武男氏の研究により、18歳になるまでの子ども時代に希死念慮(死にたいと思う気持ち)を抱いた人では、高齢期になってある症状を呈するリスクが高いことが明らかになった。詳細は、第29回日本疫学会学術総会で発表された。

1,200人以上の高齢者を調査

 「日本青少年危険行動調査2011」によると、全国からランダムに抽出された約1万人の高校生における「自殺願望あり」(過去1年以内)の割合は、男子16.3%、女子27.1%と高かった。一方、幼少期に希死念慮を抱いた人では、青年〜成人期にうつ病を発症するリスクや、自殺企図(実際に自殺行動を起こすこと)に至るリスクが高いことも報告されている。

 ところが、少年〜青年期の希死念慮が高齢期の精神的問題に与える長期的な影響についてはこれまで研究されていない。そこで、森田氏らは東北地方のある町に住む高齢者を対象に、18歳になるまでの希死念慮の経験と高齢期における抑うつ症状の発症状況について検証した。

 解析対象は、国民保険に加入している65歳以上の住民4,839人のうち、自己記入による無記名式の質問票に回答した1,244人(平均年齢75.1歳、女性の割合54%)。認知症の治療を受けている人や、特定施設入居者および要介護者などは除外された。

希死念慮を抱いた高齢者の抑うつリスクは1.6倍に

 質問票における評価項目は次の通り。希死念慮については、「18歳になるまでに死にたいと思ったことがあるか」を「ある=1」、「ない=0」で数値化。高齢期の抑うつ症状については、①「うつ病の治療状況」を「治療中=1」、「非治療中=0」で、②「重度の抑うつ症状」を老年期うつ病評価尺度評価(GDS15)で「10点以上=1」、「10点未満=0」でそれぞれ集計した。

 解析を行った結果、18歳になるまでに希死念慮を抱いたことがある高齢者は全体の6.8%を占めた。希死念慮を抱いたことのない高齢者と比べ、抱いたことのある高齢者では、「幼少期の養育環境」における「経済状況」が標準以下である割合が高く、「逆境体験」や「治療中の疾患(特に心疾患)」の数が多かった。しかし、性、年齢、性格傾向、幼少期の養育環境(経済的、身長、逆境体験)、成人期のストレッサー(教育歴、職種、世帯収入、過去1年間のストレスイベント、治療中の疾患数、心疾患の治療状況、日常生活動作)、社会的ネットワークおよびサポート(婚姻状況、世帯構成、就業状況、不安や悩み事に対するサポートの授受状況、援助希求態度)など、希死念慮と抑うつ症状に影響を与えうる因子の影響を調整してもなお、重度の抑うつ症状を呈するリスクは、希死念慮を抱いたことのある高齢者の方が1.62倍高いことが明らかになった。

 森田氏は「希死念慮を抱いた子どもは、高齢期まで生きても重度の抑うつ症状を呈するリスクが高いことが分かった。精神的な苦痛の緩和とともに、長期的な負の結果を緩和する、適切な支援を提供することが求められる」と締めくくった。

(あなたの健康百科編集部)