2019年02月27日 公開

ある病歴が妊婦のメンタルに影響

病歴の聞き取りが重要

©Getty images

 月経時に下腹部や腰が激しく痛む月経困難症。つらい思いをしている女性は少なくない。東北大学などの研究グループは、妊婦8万7,000人超を対象に、妊娠前の月経困難症と妊娠中の心理的ストレスの有無との関連を検討。妊娠前に月経困難症があった女性は、心理的苦痛(精神的ジストレス:妊娠中に耐え難い心理的苦痛を感じる状態)を訴えるケースが多いことを示し、11月5日の「Journal of Affective Disorders」(2018;245:475-483)に発表した。妊娠により月経が一時的に停止している女性に対して、妊娠前の月経困難症の有無についての聞き取りが重要であることを明らかにした報告は、今回が初となる。

妊婦の精神状態に対する月経困難症の影響を解析

 妊婦の不安や抑うつは、早産や低出生体重、妊娠高血圧症候群などの周産期合併症や産後の育児障害、子どもの神経発達障害のリスクとなる。そのため最近では、妊婦に対する精神的ケアが重要視されている。

 月経困難症は、強い下腹部痛や腰痛、下痢などの症状によって生活の質を著しく低下させる。また、身体的症状だけでなく精神状態にも影響を及ぼすとされ、周産期においては産後うつとの関連も示されている。しかし、これまで妊娠中の女性の精神状態への影響について調べた研究はなかった。

 そこで研究グループは、2011~14年に日本で実施された大規模疫学調査のデータから、妊娠初期~中期に心理的苦痛のなかった妊婦8万7,102人を抽出。妊娠中期~末期における心理的苦痛の有無を調べるとともに、妊娠前の月経困難症との関連を解析した。今回は、精神的な問題の程度を評価するための尺度「K6」の点数が、24点中13点以上を心理的苦痛ありと判定した。

心理的苦痛のリスクは月経困難症の重症度に比例

 その結果、妊娠前に月経困難症を有していたのは9,264人(全体の10.6%)、症状が重度なのは1,638人(全体の1.9%)だった。また、1,870人(2.1%)の妊婦が、妊娠中期~末期に心理的苦痛を抱えるようになった。

 妊娠前の月経困難症に重症度別に見ると、心理的苦痛を有する割合は、月経困難症がなかった妊婦で2.1%だったのに対し、軽度、重度の月経困難症を有していた妊婦ではそれぞれ2.6%、3.6%と高かった。

 続いて、研究グループは、妊婦の精神状態と関連性の高い精神疾患(うつ病や不安障害など)の病歴や、社会経済的要因(年齢、学歴、収入、嗜好など)、月経困難症を来しうる婦人科系の病気(子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫)などの影響を補正した上で、妊娠中に心理的苦痛を有するリスクを解析。その結果、妊娠前に月経困難症がなかった妊婦と比較して、軽度の月経困難症があった妊婦における心理的苦痛のリスクは約1.2倍、重度の月経困難症があった妊婦では約1.5倍と、そのリスクは月経困難症の重症度に伴い増大していた。

 本来、月経は妊娠を成立させるために最も重要な生理現象の1つである。それにもかかわらず、妊娠により一時的に停止すると、妊娠前の月経状況、特に月経困難症をはじめとする月経異常については軽視されがちだ。研究グループは「今回、妊娠前の月経困難症が、妊娠中の母親の精神状態に関連することが示された。母親の周産期メンタルヘルスケアにおいて、妊娠前の月経状況の把握を、これまで以上に重要視する必要がある」とコメントしている。

(あなたの健康百科編集部)