2019年03月11日 公開

手や足の関節の痛み、早く見つけ、医師に伝え、適切な治療を受けよう!

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 関節リウマチは、生物学的製剤などの新しい治療薬が登場したことによって、早期に見つけて適切に治療を受ければ、関節が壊れることを防げる時代になりました。また、かつては関節リウマチだと診断がつくまでに時間がかかると言われていましたが、今では関節超音波(関節エコー)検査や自己抗体検査などによって、比較的速やかな診断が可能になってきています。

 このように早期に適切な医療を受けるためには、患者さん自身が症状に気付いた時点で、適切な医療機関を受診することがとても重要です。症状を早く見つけて受診し、適切な治療を受けるための道筋や、自らの症状を上手に伝えるポイントなどについて、リウマチ診療のエキスパートである有澤総合病院リウマチ膠原病内科部長/リウマチ膠原病センター長の吉田周造氏に聞きました。

●関節の痛みだけでなく全身の気になる症状があれば医師に伝えよう
●関節リウマチが心配な人はリウマチ専門医を受診しよう
●自分に合った治療を選べるので医師に何でも相談しよう

関節の痛みだけでなく全身の気になる症状があれば医師に伝えよう

----手や足の関節に痛みがある場合、関節リウマチでは?という可能性も考えたほうがよいと聞きます。関節リウマチが疑われる症状にどのようなものがあるでしょうか?また、関節の腫れや痛みが気になるときには、まず整形外科を受診すればよいのでしょうか。

吉田氏 関節が痛むという症状の病気はたくさんあります。整形外科的な疾患として典型的なものは変形性関節症です。膝など1つの関節が痛む場合は整形外科を受診するのがよいでしょう。ただ、例えば手や指、足など痛みや腫れのある関節が複数あるときや、関節痛以外にも気になる症状があれば、関節リウマチや膠原病の可能性を考えます。

 関節リウマチの症状として典型的なものは、手の指の関節の痛みが両手に起こることです。ただし、片手にだけ痛みが生じる人もいます。また、意外と自覚しづらいのが足の指の痛みです。普段ヒールの高い靴を履いている人の場合、足の痛みを日常的なものと感じていることが多いため、医師から「足の指などに痛みがありますか?」と聞かれるまで、痛みが関節リウマチによる症状とは思いつかないことが多いのです。手だけでなく足にも痛みがあると言われれば、医師も関節リウマチである可能性を想定しやすくなります。

 手や足の関節の痛みだけでなく、体がだるい、微熱が続くといった症状があれば、ますます関節リウマチや膠原病の可能性を考える必要があります。朝に症状が出ることが多いのも、関節リウマチの特徴です。

 まず整形外科を受診するのでもよいですが、さまざまな症状がある場合には最初から膠原病科やリウマチ科に相談されてもよいでしょう。いずれにしても、「整形外科だから関節の痛みについて相談する」または「内科だから関節の痛みは相談できない」というのではなく、全身に起きている自覚症状、ちょっと気になる症状は必ず医師に伝えてください。そうすると、医師も判断材料が増えるので、正しい診断に結びつきやすくなります。関係ないかもしれないなどとは思わず、何でも伝えた方がいいですね。どういう時に、どんな症状がどの程度持続しているのかも大切です。

関節リウマチが心配な人はリウマチ専門医を受診しよう

----関節リウマチは直ちに診断が確定するのでしょうか。

吉田氏 最初に来院された際に、どの関節にいつからどのような症状があり、その症状がどの程度続いているのかなどを問診します。そして、症状のある部位などの関節を手で触って腫れや痛みの状態を確認します。さらに、血液検査で関節リウマチの患者さんに現れる変化などが見られるかを調べます。また、関節のレントゲン検査に加えて関節エコー検査や関節MRI検査などを行うこともあります。それらの結果に基づいて総合的に診断します。

 血圧が高いから高血圧、血糖値が高いから糖尿病といったような、客観的な指標で速やかに診断がつくものではないのが関節リウマチの難しさです。血液検査に異常が見られなくても関節リウマチである人はいます。何らかの検査だけで直ちに診断がつくわけではないため、場合によっては、ある程度、症状の経過を含めて診ていかなければ確定的な診断は難しいのです。

----経過を見る場合、一般に、どれくらいの間隔で受診することになりますか。

吉田氏 受診後の症状の変化を継続してみていく必要があるため、2~4週に1回の頻度で受診してもらっています。もしも関節の使いすぎによる関節痛であれば、2週間程度で症状が軽減していることが多いのですが、関節リウマチだとある程度時間が経っても痛みが続きます。症状が日中どの時間帯にどのように続いているのかも、関節リウマチと診断をつける上で重要な情報です。

----診断がつくまで様子を見なければいけないとなると、不安になりそうですね。今、この痛みをどうにかしたい!というときにはどうしたらいいですか。

吉田氏 診断がつかず、症状の原因がはっきりしないのは不安だろうと思います。痛みが強い場合は、主治医に相談して痛み止めの薬を処方してもらうのもよいでしょう。

 関節リウマチの診断は難しい面があるものの、リウマチ専門医を受診してもらえれば、比較的早く診断がつけられるようになってきています。

 例えば血液検査の異常値がそれほど高くなく、関節リウマチの症状が現れてからの期間が短いため判断しづらいような患者さんの場合、痛みや腫れのある部位を関節エコー検査で調べます。関節エコーを使えば、関節リウマチによって引き起こされる滑膜(関節を覆う膜)の炎症など、より早期の関節の変化を確認できるのです。そのような補助的な診断方法を使って、関節リウマチを早く診断できるようになっています。ですから、特に関節リウマチが心配な人は、リウマチ専門医を受診することをお勧めします。

自分に合った治療が選べるので医師に何でも相談しよう

----関節リウマチだと診断がつくと、症状の原因が分かって安心する面と、これからどうなるのだろう?と不安になる面があると思います。「関節リウマチは治りますか?」と尋ねられることはありますか。

吉田氏 「治りますか?」と尋ねられることは多いですね。やはり病気は治るのが一般的で、私たちは、治るからこそ病院に行くイメージを持っています。

 ただ一方で、いわゆる「治る」というイメージには当てはまらない病気もあります。例えば糖尿病や高血圧は、治るというわけではないものの、お薬で病気を抑えることができます。関節リウマチも同様で、残念ながら今の治療ではいわゆる「治る」というわけにはいかないのですが、治療を継続することで症状をしっかり抑えることができ、日常生活を取り戻すことは十分に可能な病気です。その人に合った適切な治療で症状を取り除いて、日常生活を差し障りなく送れるようにするのが、今の関節リウマチの治療目標です。

 治療に用いる薬の選択肢も広がっています。メトトレキセート(MTX)などの従来の抗リウマチ薬に加えて、生物学的製剤やJAK阻害剤という新しい飲み薬などがあり、患者さんに合った治療を選べるようになっています。

----先生が診ているリウマチ患者さんのうち、生物学的製剤など新しい薬を使われている患者さんの割合はどのくらいでしょうか。生物学的製剤の効果は高いが費用の面では使い続けるのが難しいという悩みもあるようですね。

吉田氏 MTXなどの抗リウマチ薬で効果がある人が5割程度で、生物学的製剤やJAK阻害剤を使っている人がおよそ3~4割です。生物学的製剤やJAK阻害剤には十分な治療効果が期待できるのですが、費用の面などから使いづらい患者さんもいます。その場合、いくつかの飲み薬を組み合わせて使うこともあります。一方で、腎臓などに合併症がある場合や抗リウマチ薬の副作用が強い場合には生物学的製剤の方が使いやすい場合もあります。治療の選択肢が増えたことで、患者さんの状況に合った治療を患者さんと相談しながら選んでいます。

 生物学的製剤が初めて使えるようになった2003年から今まで、15年以上が経過しました。これまでにその使い方について、国内外でさまざまな臨床研究が行われてきました。今では「生物学的製剤を使って関節の症状が治まった後、どうするか?」「どのように使うのが、患者さんにとって利益が大きいのか?」に医師の関心も変わりつつあります。症状だけでなく、経済的事情や生活状況、価値観などあらゆる視点から、その人にあった治療法を考慮するようになっています。

 ですから、患者さんの疾患活動性(いわゆる症状や病気の程度)や合併症はもちろん、それ以外の生活背景、例えば経済的な事情や家族の事情などもうかがうようにしています。患者さんは、実にさまざまな事情を抱えていますから。例えば、ご家族の介護をしなければいけないので、なかなか通院が難しい方もいます。

 ご家族に治療費のことを話しづらいという患者さんも結構おられます。ご家族にも一緒に来ていただいて、患者さんの治療経過や必要となる薬について、ご家族にも説明をしています。私から話した方が、ご家族の受け入れがよいのです。他の人には痛みや症状が見えないので「本当にそんな治療が必要なのか?」と思われてしまうこともあるのです。そのあたりを説明して理解してもらえれば、ご家族もがんばって治療をサポートしてくれます。

 関節リウマチは患者さんの人生の一要素となるわけですから、それぞれが抱えている事情を踏まえた上で、その人にあった治療の選択肢をいくつか提示し、相談しながら決めていく。それが、今の関節リウマチの治療のあり方です。

----関節リウマチかも?と思ったら、リウマチ専門医を受診することが大切ですが、リウマチ専門医が近隣に見当たらない場合もありますね。

吉田氏 確かにリウマチ専門医は大都市圏に多く、地域による差がみられます。そのため、医療連携が大切になっています。関節リウマチを専門としていない主治医から、リウマチ専門医に患者さんを紹介してもらうといった取り組みです。関節リウマチは発症したときの鑑別診断が大切で、早く診断をつけることで早く治療を始めることができますから、関節リウマチかどうか診断をつけるのはリウマチ専門医の重要な役割なのです。

 リウマチ専門医がどこにいるのか、どこを受診したらよいのか分からない場合でも、地域で連携している医療機関がありますので、主治医に紹介してもらうとよいと思います。当院では、受診時に関節エコー検査を受けていただくことができますが、予約が必要な施設も多いのが現状です。早く診断をつけるためにも、積極的な医療連携が必要ですね。

関節リウマチは長い付き合いになる病気ですから、例えば妊娠や出産などのライフステージに応じた治療のあり方を考えていく必要もあります。私のところでは、リウマチ膠原病内科医と妊娠出産をケアする産婦人科医との連携にも取り組んでいます。関節リウマチ患者には若い方から高齢の方までいらっしゃるので、さまざまな形での連携が必要になってくるのです。

----人生の一要素として長く付き合う病気であるため、不安や悩み、こうしたいという希望など、医師に相談したいことが多くなりそうです。診察時には、伝え忘れないようにメモを持っていくのがよいかもしれませんね。

吉田氏 そうですね。白衣を着た医師と向き合ったとたんに頭の中からすっぽり抜けてしまって、「何を言おうと思っていたのだっけ?」となる患者さんもいらっしゃいます(笑)

 私の病院では、診察時に問診票をお渡しし、次回の受診日に持ってきてもらいます。患者さんも医師に伝えたいことが頭の中で整理できますし、医師も患者さんが考えていることが分かりますので、よい方法だと思いますね。

----長い付き合いとなる関節リウマチですから、サポートしてくれる医師との信頼関係が大切になりますね。

吉田氏 はい。患者さんにはいろいろなことを相談してもらい、私たちもさまざまな提案を全力で考えてサポートしていくことが必要だと思っています。言い出しづらいことを抱えている患者さんには、「なんでも言っていいのですよ」と、背中を押したいですね。

有澤総合病院リウマチ膠原病内科部長/リウマチ膠原病センター長 吉田周造氏
大阪医科大学内科学Ⅳ非常勤講師。日本リウマチ学会リウマチ専門医・リウマチ指導医。日本リウマチ学会登録ソノグラファー。膠原病友の会・リウマチ友の会所属。

(あなたの健康百科編集部)