2019年04月05日 公開

精神医学的評価法で暴力的犯罪の再犯率を予測

 理性を置き去りにした衝動的な行為は、さまざまな社会問題を引き起こす。中でも暴力行為に結びつく衝動性は、人生を大きく変えてしまいかねないほど危険である。暴力に関連する衝動性の評価尺度(IMP-V)をフィンランドの研究チームが開発し、犯罪者を対象に検討を行った。その結果、罪を犯し服役した人物が釈放後に再び暴力的な罪を犯すかどうかについてのIMP-Vによる予測精度は、78%であったと報告した(Criminal Behaviour and Mental Health 2019年1月10日オンライン版)。

12の項目で暴力につながる衝動性を評価

 IMP-Vは衝動的な性格に関する初期の研究(1977、1997)を基に、研究チームが開発した新たな評価スケールである。1)衝動的に行動する、2)今すぐ満足したい、3)自尊心が低い、4)忍耐力がなく短気、5)計画性がない、6)他人を信じられない、7)不安を感じると何かせずにいられない、8)手に入れる権利があると思うものは手に入れる、9)絶望感から自己破壊的行為に走る、10)対人関係は不安定でしばしば矛盾する、11)薬物を使って感情的な痛みに対処する、12)自身の暴力的行動に関する要因への理解に限界がある -の12項目で構成され、各項目のスコア〔0点(なし)、1(部分的にあり)、2(あり)〕および合計点で、暴力に関する衝動性の評価を行うもの。

 フィンランドでは裁判所が犯罪者に対し、法医学精神検査を受けるよう命じることができ、この検査データを含む犯罪記録は5年以上の拘禁刑の場合、当人が死ぬか90歳に達するまで削除されない。研究チームはこれを利用し、法医学精神検査データを用いて彼らの衝動性の強さをIMP-Vで評価、検査後の再犯の有無と照合し同スケールの予測精度を検討した。

 対象は1999年に法医学精神検査を受け、2000年1月から最長2015年5月まで追跡可能であった63人(男性57人、女性6人)。1999年時点での平均年齢は32.5歳だった。犯罪の内訳は、56人が暴力を伴う犯罪で、6人が放火、1人が窃盗など金銭に関する犯罪であった。服役したのは52人、残る11人は精神疾患や知的障害のため病院に収容され、出所から追跡終了までの期間は平均10年3カ月、退院からは8年3カ月であった。暴力的な犯罪で追跡期間中に再逮捕されたのは24人(男性23人、女性1人)で、病院に収容された11人は含まれていなかった。

 研究チームのうち、個々の対象について一切の情報を与えられなかった1名がIMP-Vによる評価を行った。その結果、再犯者は12項目全てで非再犯者よりスコアが高く、合計スコアで見た予測精度は78.1%、各項目のリスクから算出された予測精度は77.5%であった。また、IMP-Vの項目が暴力的な犯罪を予測するのにふさわしいかをみる統計学的係数は高い値を示し、同評価スケールが有用であることが示された。

 今回の結果について研究チームは「IMP-Vは衝動的に犯罪を起こした者が再び暴力的な犯罪を起こすかどうかを予測、さらには予防する手段として有望であることが示された。IMP-Vを用いた暴力につながる衝動性の研究は、より効果的なリスク管理の実現につながると思われる」としている。

(あなたの健康百科編集部)