2019年06月04日 公開

白昼夢で幸せになれる?

©Hiroshima University

 目の前の物事とは関係ないことをぼ〜っと空想したり、ふと気付くと心ここにあらずの状態になっていたり、あるいは小説やアニメーション、ゲームなどの世界に没頭して時間がたつのを忘れてしまったりといった経験は誰しもあるだろう。このような状態は白昼夢と呼ばれ、あまり長時間ふけっていると、「夢見がちな人」「もう少し現実を見なさい」などと否定的に捉えられるケースが多かった。そんな白昼夢のイメージを覆すような研究結果を、広島大学などの研究グループがJournal of Happiness Studies2019年5月6日オンライン版)に発表した。

以前の研究では否定的な結果が示されていた

 白昼夢と精神的な健康との関係については、2010年に米・ハーバード大学の研究者らがスマートフォンを用いた調査を行い、①人間は平均して起きている時間の50%を白昼夢にふけっている②白昼夢にふけっている間は幸福感が損なわれている−という結果をSience誌に発表し、大きな注目を浴びた。

 しかし、研究グループは「健康を損なうような行為に活動可能な時間の半分近くを費やすというのは、矛盾しているのではないか」と考えた。また、白昼夢にふけっているときには、過去の経験を思い出したり、将来の計画を立てるときと同様に脳の活動が活発的化しているとの報告もあるため、「全ての白昼夢が無駄で健康を損なうわけではなく、白昼夢にふけることで幸福感を高める場合と損なう場合があり、幸福感を高めるための条件があるのではないか」と仮説を立てた。

 それを検証するため、①日本人成人800人(女性50%、年齢20〜59歳)を対象に、白昼夢の頻度、幸福感、マインドフルネス(関連記事参照)の程度、アニメやゲームに費やす金額(オタク消費)について質問するインターネット調査②日本人成人104人(女性53%、年齢22〜50歳)を対象に、プライミング操作という方法を用いて、白昼夢の頻度と幸福感の関連を検討する実験−という2つの研究を行った。

一瞬目に入った情報が、気付かぬうちにその後の認知に影響を及ぼす現象。例えば、若者に「老い」に関連する単語を見せると、歩く速度がゆっくりになったりする

オタクは白昼夢の達人!?

 1つ目の研究では、空想傾向(白昼夢の頻度)はCEQという質問票で、マインドフルネスはFFMQという質問票で評価。オタク消費についてはアニメとゲームに費やした金額を「1(なし)〜7(非常に多い)」の7段階で評価。幸福感については、SWLSとPWBという2つの指標で評価した。その結果、マインドフルネスが高い人やオタク消費が多い人では、白昼夢の頻度が高いほど幸福度も高いことが分かった。

 2つ目の研究では、白昼夢の頻度と幸福感の程度を質問する前に、アニメのキャラクター風の少女のイラスト()を見せるグループと真っ白な画面を見せるグループに半分ずつ分けて実験を行った。すると、イラストを見せられたグループで、なおかつイラストを見ていた時間が短い人では、白昼夢の頻度が高いほど幸福度も高いことが分かった。これは、質問内容とは関係ないイラストがそれとは気付かぬうちに白昼夢の経験を思い出させ、回答に影響したと考えられるという。

図. 2つ目の研究で使用したイラスト

(広島大学プレスリリースより。作画:更生之素氏)

 これらの結果を踏まえ、研究グループは「マインドフルネスには、うつ病などの再発予防効果や幸福感を高める効果があることが知られている。今回の結果は、マインドフルネスが内側に向いたネガティブな意識を外に向けることで効果を発揮するという単純なものではなく、白昼夢を含めた自分の内面で起きている出来事との『付き合い方』をより洗練させるのに役立っていることを示唆している」と考察、「アニメやゲームを熱狂的に楽しむ人たちは、受動的にコンテンツを受け入れるのではなく、作品のキャラクターと疑似恋愛をしたり、世界観に基づく独自の空想を働かせたりして楽しんでいることが知られている。いわば、オタクは白昼夢の達人ともいえ、こうした『作法』を通じて幸福感を高めているのではないか」と指摘。

 「起きている時間の半分を占める白昼夢という現象を否定的に捉えるのではなく、マインドフルネス瞑想のトレーニングに空想との付き合い方を取り入れる、オタク文化を楽しむ『作法』としてコンテンツと一緒に発信するなど、活用方法を考えた方が有益だろう」とまとめている。

(あなたの健康百科編集部)

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