2019年06月07日 公開

創造的な芸術活動で心健やかに

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 英国放送協会(BBC)とロンドン大学ユニバーシティーカレッジ(UCL)は、創造的な芸術活動が健康に与える影響を検討するための大規模調査を行った。その結果、たとえ短時間でも絵を描いたり、ダンスを踊ったり、ピアノを弾いたりする芸術活動を行うと、感情をコントロールしやすくなり幸福感が高まることが明らかになった。

 これまで多くの研究から、創造的な芸術活動にはネガティブ感情からの解放、精神面の健康を高めるなどの効果があることが確認されている。しかし、なぜそうした効果がもたらされるのかは、いまだ不明である。その理由を明らかにする目的で、昨年(2018年)3月に英国で開催されたGet Creative Festival(※)の一環として今回の大規模調査が行われた。
 調査はウェブアンケート形式で実施され、英国人を中心に4万8,783人から、「創造的な芸術活動」によって感情面にどのような影響があるか(自尊心が高まる、不要な考えや感情を遮断できるなど)についての回答を得た。今年の同フェスティバル(5月11~19日)で調査結果が公表された。

新しい活動であること、リアルな交流を伴うことが大切

 回答を分析した結果、感情をコントロールして健康な状態が保たれるには、常に新しい活動に取り組む姿勢が重要であることが明らかになった。創造的な芸術活動を行うことは、わずか1回でも感情に良い影響を及ぼし、定期的に繰り返すことで好影響は増大する。ただし、特定の活動を10年以上続けていると、否定的な感情を制御する効果が低くなる可能性があるという。特定の芸術分野への十分なスキルがあるかどうかは関係なく、新たな活動に取り組み、挑戦し続けることが重要らしいことも分かった。

 また、インターネットやTV電話などを介したバーチャルな活動よりも、現実社会で人と会ったり話したりする活動の方が望ましいという。例えば、実際に合唱団に参加したケースと離れた場所の合唱団にバーチャルで参加したケースでは、ともに感情のコントロールへの良い影響が見られたものの、より強い効果が認められたのは、実際に合唱団に参加したケースであった。

創造的な芸術活動がもたらすもの

 調査を行ったUCLのDaisy Fancourt氏らは、「創造的な芸術活動は私たちに以下のような作用をもたらし、その結果として感情のコントロールが可能になると考えられる」と述べている。

 1.日常生活で直面する困難な問題への不安から意識をそらし、ストレスを軽減する
 2.問題をあらためて見つめ直し、どのように対処するかを考える余裕を与える
 3.自尊心や自信を高めて、問題に対処する準備を整える

 今年のフェスティバルでも同様の調査が実施され、調査終了後には、どのような余暇の使い方をすればより健康になれるかについて、回答者に合ったアドバイスが示されるという。

 周囲から大きな期待が寄せられ、その責任を重く受け止める人ほど、日々の生活で多くの問題と向き合い、余暇を楽しむ時間を取りにくくなるのではないだろうか。しかし今回の調査結果が示すように、ほんのわずかな時間でもいったん目の前の問題から距離を置き、創造的な芸術活動で人と触れ合うことで、意外にも簡単に問題解決へのヒントが得られるのかもしれない。

※ 数年前から1年に1回、英国で開催されている創造的な芸術活動を体験するフェスティバル。芸術団体やコミュニティグループが英国各地で数多くのイベントを催し、一般市民がキルティング、映画制作、歌唱、刺繍、脚本創作、写真撮影、ダンスなどを行っている。

(あなたの健康百科編集部)