2019年06月11日 公開

手術後にネガティブ思考はNG

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 ポジティブ思考や笑う回数が多いことなどは、健康に良い影響を与えることが知られている(関連記事参照)。それに対して、ネガティブ思考や強過ぎる責任感はメンタルヘルス(精神衛生)に悪影響を及ぼすことが分かっているものの、性格を変えるのは簡単なことではない。筑波大学の研究グループは、物事をネガティブに考えがちで我慢強い性格の人は、精神面だけでなく、外科手術後の回復にも悪影響が及ぶことを発見、医学誌BMC Psychology2019; 7: 27)に発表した。

日本人の半分近くが該当?

 長い期間をかけて形成された個人の性格は、その人の個性を特徴付けるだけでなく、不安やうつ症状などの一時的な精神症状、せん妄(意識精神障害の一種で、感染や手術後の回復期に幻覚・幻聴が現れ、攻撃的になる、意味不明なことを口走るといった症状が突然生じる)などの疾患と関係することが知られている。また、医学的な治療経過には性格が影響しているともいわれており、近年研究が進んでいる。

 そうした中、物事をネガティブに考えやすい一方で、我慢強く、自分の思いをなかなか表に出せない「タイプD性格」が注目されている。これまでの研究から、日本人ではタイプD性格に該当する人が46.3%に上り(PLoS One 2013; 8: e77918)、タイプD性格の心血管疾患患者は他のタイプの性格の患者に比べ、5年以内に死亡するリスクが4倍になることが報告されている(Curr Opin Anaesthesiol 2014; 27: 117-22)。

 また、タイプD性格の人はうつ症状になりやすい傾向があり、うつ症状はせん妄を発症させる原因の1つであることも知られている。せん妄は、心臓外科手術後の患者の26〜56%に発生するといわれ、入院日数の延長や死亡率の上昇など患者に大きな不利益をもたらす。

 研究グループは、せん妄の背景にはタイプD性格があるのではないかと考え、両者の関連を検討した

表現が苦手な患者に寄り添う医療を

 研究対象は、2015〜16年に筑波大学病院で心臓血管外科手術を受ける前に性格判断とうつ症状に関する質問に回答し、術後1週間のせん妄や昏睡状態などの意識状態が観察できた18歳以上の患者142人。

 検討の結果、142人中タイプD性格の人は37人(26%)で、せん妄の発症率は非タイプD性格の人の30%に対し、タイプD性格の人では45%と高い傾向が認められた。さらに、タイプD性格は術後1週間のせん妄の発症と昏睡期間が延長する(=急性脳意識障害が発生する)リスクを高めること、またタイプD性格の人ではうつ症状が急性脳意識障害に与える影響が大きいことも分かった。

 これらの結果を踏まえ、研究グループは「タイプD性格の患者でうつ症状がある場合、心臓外科手術後1週間はせん妄の発症が多かったり、意識障害期間が長引いたりすることが分かった。タイプD性格の人は、その性格から自分の症状を医師にうまく表現できず、うつ症状が見逃されている懸念がある。医療者は患者の性格や人格的要因を軽視せず、表現を苦手とする人のうつ症状に寄り添うことが重要だ。外科手術などの集中治療が必要になる患者では、あらかじめ質問票などを用いてタイプD性格かどうかを判断しておけば、術後のせん妄への予防対策を講じることができるだろう」とまとめている

(あなたの健康百科編集部)

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