2019年06月25日 公開

禁煙治療にスマホアプリが処方される時代到来?

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 来年(2020年)の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催に向け、受動喫煙対策強化、相次ぐたばこの値上げなど、喫煙者を取り巻く状況は厳しさを増している。あなたが喫煙者なら、「この機会に禁煙しようかな」と考えたことが一度や二度ではないはず。しかし、禁煙はそう容易なことではない。「禁煙外来で治療を受けても、1年後には約7割の人が再び喫煙してしまう」という事実が厳しさを物語っている。この状況を打破すべく開発されたのが、スマホで使える「ニコチン依存症治療用アプリ」だ。2017年には、日本初となる「アプリの治験(医薬品や医療機器の製造販売に関して国の承認を得るために、健康な人や患者に対する効果と安全性を調べる試験)」がスタートして話題を呼んだ。先ごろ開催された株式会社キュア・アップ主催の記者発表会では、治験調整医師を務めたさいたま市立病院内科科長/慶應義塾大学病院呼吸器内科禁煙外来非常勤講師の舘野博喜氏が治験の結果を国内で初めて報告した。

標準禁煙治療プログラムとの併用効果を検討

 この治験では、禁煙外来で行う標準禁煙治療プログラム(診療5回、禁煙補助薬処方、アドバイス)に加えて、ニコチン依存症治療用アプリ〔患者用スマホアプリ、医師用webアプリ、患者用ポータブルCO(一酸化炭素)チェッカーで構成〕を使用した際の有効性と安全性が評価された。参加者は禁煙外来を受診し、スマホを使用しているなどの基準を満たしたニコチン依存症患者572人。このうち285人を、「標準治療プログラムと本物の治療用アプリを併用する」治験治療群と「標準治療プログラムと治療効果が期待できないアプリを併用する」対照群に振り分けた。治験開始とともに、全患者は禁煙外来で治療を受けながらアプリを使用。12週間後に禁煙外来の治療が終了した後もアプリの使用は12週間継続(24週間後にアプリを削除)し、52週間後まで経過を観察した。有効性の評価は、両群の「9~24週における継続禁煙率(禁煙治療開始後9週目から24週目まで禁煙を継続している割合)」の比較で行われた。  

禁煙補助薬に匹敵する効果

 検討の結果、9~24週における継続禁煙率は、対照群の50.5%に対し、治験治療群では63.9%と13.4%高く、ニコチン依存症治療用アプリが禁煙の継続に役立つことが明らかになった。また継続禁煙率は、アプリの削除後も52週時点まで治験治療群の方が高かった。この"13.4%"という数値は、どれぐらいの効果を示しているのか。舘野氏は参考資料として、ニコチンの身体的依存に効果を発揮し、禁煙外来でも使われている「禁煙補助薬バレニクリン」の試験データを提示した。それによると、24週時点での継続禁煙率は、禁煙効果のない偽薬を飲んだ群の29.5%に対し、バレニクリンを飲んだ治療群では37.7%と高く、その差は8.2%であった。異なる試験の成績であるため、単純に比較はできないが、ニコチン依存症治療用アプリの効果は禁煙補助薬に匹敵するほど高いと考えられるわけだ。

 現在、薬事承認に対する申請は済んでおり、来年の保険適用取得を目指している。オリンピックが開催されるころには、禁煙外来で医師から禁煙補助薬とともにニコチン依存症治療用アプリが処方される時代が来るかもしれない。

(あなたの健康百科編集部)