2019年08月06日 公開

メジャーリーガーは長生き

 1964年に日本人(アジア人)初のメジャーリーガーとして、村上雅則氏がメジャーリーグ(MLB)に昇格して以来、全米にトルネード旋風を巻き起こし2回のノーヒットノーランを達成した野茂英雄投手、世界の安打製造機・イチロー選手、ワールドシリーズMVPに輝いたゴジラ・松井秀喜選手をはじめ、最近では二刀流で話題を集める大谷翔平選手など、MLBで活躍する日本人選手は多い。米・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのVy T. Nguyen氏らは、1万人を超えるメージャーリーガーを対象にした調査から、一般人に比べメジャーリーガーは長生きであることが明らかになったと発表。選手としてのキャリア(実働年数)や守備位置による興味深い違いも見られたという。詳細は、JAMA Intern Med2019年7月22日オンライン版)に報告された。

キャリアや守備位置別に解析

 これまで、米国の一般男性と比べてメジャーリーガーは長生き(全ての死因や特定の病気による死亡率が低い)という幾つかの研究結果が報告されている。

 メジャーリーガーは公式戦だけでも年間162試合(1年の4割以上に相当)をこなす必要があり、さらに春季キャンプ、試合前のトレーニング、全米さらには海外遠征などを乗り切る強靭な体力とタフさが求められる。そうした日ごろの活動を通じて健康状態が高まり、特定の病気や死因による死亡率が下がる可能性がある一方で、運動に関連するけが、長距離移動やナイトゲームの翌日に休息日なしでデーゲームを行う過密スケジュールなど、MLB特有の環境は逆に選手の健康に悪影響を及ぼすかもしれない。

 そこでNguyen氏らは今回、メジャーリーガーのデータベースから1871~2006年にMLBの公式戦に少なくとも1試合以上出場した選手を調べ、死亡記録のデータベースとリンクさせて標準化死亡比(SMR)を算出し、さまざまな病気による死亡率を一般米国人男性と比較。具体的な死因や選手としての実働年数・守備位置による違いなども検討した。

予想される死亡数に対する、実際の死亡数の比。対象となる集団における数値が1よりも大きいと死亡率が高く、1よりも小さいと低いことを示す

全死因死亡率は低いが、がん死率は高い

 解析の結果、1906~2006年にMLBデビューした選手は1万451人(デビュー時の平均年齢24.3歳、白人79.1%、平均実働年数6.0年)、平均死亡年齢は77.1歳であった。一般米国人男性と比べ、メジャーリーガーは全ての死因による死亡率が低く(SMR 0.76)、糖尿病(同0.54)、消化器疾患(同0.67)、循環器疾患(同0.81)など多くの死因についても低い傾向が認められた。

 より長くMLBでプレーすること(実働期間が長いこと)は、より低い全死因死亡率(一般男性を100とした場合97)、心血管関連死率(同91)と関連する一方、がん死についてはより高い死亡率〔肺がん(同113)、血液がん(同122)、皮膚がん(同153)〕と関連していた。

 守備位置別に見ると、投手を100とした場合の死亡率は二塁手と遊撃手では全死因(81)、がん関連(78)、呼吸器疾患関連(56)が低く、外野手では傷害関連(51)が低かったのに対し、捕手では泌尿生殖器関連(252)が高かった。

 Nguyen氏らは、研究の限界として守備位置による死亡率の差には体格の違い(例えば、二塁手・遊撃手は他の野手より痩せている)が反映された可能性がある点などを指摘。その上で、「今回の結果は、MLBでプレーすることが幾つかの病気による死亡率の低下と関連することを示唆している。一般男性に対するメジャーリーガーでの死亡率の低下は、アスリートの健康労働者効果(健康調査の対象に病気やけがの選手が含まれないことで、一般人よりも健康という結果が出てしまう現象)が反映されている可能性がある。実働年数が長い選手における幾つかの死因による死亡率の低下には、より長く現役選手でいるために必要とされる良好な健康状態の維持が関連しているのではないか」と考察。

 さらに、「一般的に野球選手では泌尿生殖器の損傷リスクが高く、特に投球や打球が身体に当たる機会および接触プレーの機会が多い捕手で泌尿生殖器関連死亡率が高かったことについては、なお検討の余地がある。また、幾つかのがん関連死亡率の高さは注目に値する。皮膚がんは日光曝露との関連が想定されるが、球場の整備に使用される化学物質などが影響している可能性も否定できない。がん発生率の上昇と関連する要因を精査し特定できれば、予防戦略に役立つだろう」と付け加えている。

(あなたの健康百科編集部)