2019年08月19日 公開

失った遺伝子が心臓病の原因に?

 200万~300万年前に人類は感染症から逃れるために遺伝子のある機能を自ら失った。それがあだとなり、人類は心臓病を起こしやすくなった可能性が濃厚になってきている。この遺伝子を欠損したマウスに現代人の食事に近い高脂肪食を与えるなどしたところ動脈硬化が進展し、この仮説が支持された。詳細は、筑波大学の川西邦夫氏らがProc Natl Acad Sci USA2019; 116: 16036-16045)に報告した。

赤身肉摂取を想定したモデルマウスの実験が示唆

 人類が機能を失った遺伝子は、細胞表面にあるシアル酸のタイプを変換する酵素のもの。現代人はこの遺伝子機能がないためあるタイプのシアル酸を合成できない。しかし、微生物の多くはこのタイプを認識して宿主に感染するため、家畜など他の哺乳類が持つ人畜共通の感染症から身を守ることができるようになったと考えられている。

 このタイプのシアル酸は動脈硬化やがんと関係していることが最近疑われている。研究グループは失われた遺伝子機能と動脈硬化の関係を探るためマウスの実験を行った。

 シアル酸のタイプを変換する遺伝子を欠損させたモデルマウスを作製したところ、普通のマウスに比べ動脈硬化の進行が速かった。また、糖尿病になりやすい性質に進行していた。

 次に、心臓病の原因となる赤身肉をたくさん食べる人を想定した実験を行った。人が合成できないシアル酸を含有する高脂肪食をモデルマウスに与えるなどしたところ、他の条件のマウスに比べ動脈硬化病変が進行していた。

 これらのことから、人類はシアル酸のタイプを変化する酵素の遺伝子機能を失ったことが動脈硬化の進行と関係していることが示唆された。

(あなたの健康百科編集部)