2019年08月29日 公開

アルツハイマー病治療で注目の「リコード法」とは

 個々の患者の病態に合わせたアルツハイマー病(AD)の新たな治療法として、米国で誕生した「リコード法」。2014年に初めて症例報告が行われ、AD患者の9割で改善効果が認められたとして注目を集めている(Aging 2014; 6: 707-717)。第1回オーソモレキュラー医学会(JSOM、7月20〜21日)では、日本ブレインケアクリニック(東京・四ッ谷)の今野裕之院長がリコード法について解説。同クリニックでも2016年にリコード法を導入し、AD患者を中心に100人超に実施、そのうち治療継続中の8割以上で効果が得られているという。

従来のAD発症メカニズムとは異なる考え方

 リコード法は、米国のAD研究者Dale Bredesen氏が開発したADの統合的な治療プログラムだ。食事(栄養)、運動、睡眠、ストレスケア、脳トレーニング(脳トレ)の5項目における生活習慣の改善が柱になっている。今野院長によると、米国では2017年までに500人以上がリコード法によりADの症状が改善し、今年(2019年)5月時点で3,000人以上が同法による治療を受けているという。

 一般的に、ADの発症原因は脳内に蓄積したアミロイドβ(Aβ)という蛋白質による神経障害とされる。つまり、Aβを取り除くことでADの症状が改善すると考えられている(アミロイド仮説)。しかし、リコード法では、神経障害を起こすさまざまな問題に対する防御反応としてAβが脳内に蓄積し、結果として神経が障害される。そのためADの症状改善には、Aβが蓄積する原因を取り除かねばならないという考え方に基づいている。

 また、リコード法でADは①炎症性②萎縮性③毒物性④糖毒性⑤血管性⑥外傷性の6つのサブタイプに分類される。炎症性は脳の炎症によるもので、食事も深く関わっており、萎縮性は脳機能の維持に必要な栄養素やホルモンの欠乏によるもの。毒物性は重金属や真菌などに含まれる毒素に起因し、治療が最も困難とされ、糖毒性は持続的な高血糖状態によるもので、炎症性と萎縮性の混合型である。それぞれのサブタイプにより治療法は異なる上、大半のAD患者は複数のサブタイプが併存するため、治療も多種多様だ。

ケトン産生食でより根本的なADの原因を治療

 前述の通り、リコード法では食事(栄養)、運動、睡眠、ストレスケア、脳トレの5項目における生活習慣の改善が柱となる。中でも核となるのは「ケトフレックス12/3」という食事法だ。主な特徴は、①肉ではなく野菜をメインとするケトン体産生を促す地中海食②12時間以上の絶食時間を設ける③糖質量でなくグリセミックインデックス(GI)値が主な指標ーなど。さらに、定められた用量のサプリメントやハーブ類の摂取も推奨されている。

 今野院長のクリニックでは、これまでにリコード法を実施した100人を超えるAD患者のうち、治療継続中の8割以上で症状の改善が見られたという。例えば、94歳の女性(サブタイプは炎症性、萎縮性、糖毒性)では、糖毒性に対して糖質制限食を導入しつつ、肥満指数(BMI)の低さを考慮してココナツ油によるカロリー摂取量を増やした。サプリメントはビタミンB群、ω3脂肪酸などを摂取し、1回45〜60分の有酸素運動を週4〜5回行い、睡眠時間は8時間と設定した。また、20分間の脳トレを日課とした。

 その結果、血液検査のデータにおいて炎症、インスリン抵抗性などの改善が見られた。Mini-Mental State Examination(MMSE)による認知機能検査では、治療開始時の22点から4カ月時では26点に上昇(改善)、記憶力に問題がない時間が増え、自覚症状も改善した。家族からも、「以前より反応が少し良くなった」(2カ月後)、「以前は分からなかった、"自分が変だ"と認識できるようになった」(3カ月後)といった報告が寄せられた。

 これまでの臨床データや治療経験を振り返り、同院長は「リコード法はADの統合的な治療プログラムであり、エビデンスに基づきより根本的な治療を目指すもの」と強調。課題としては、生活習慣の改善を目指す治療プラグラムであるため、家族や介護者などの協力が不可欠である点などを指摘した。

あなたの健康百科編集部