2019年09月19日 公開

歩行速度が遅いほど過活動膀胱の人が多い

 超高齢社会を迎えたわが国において、老年医学の分野で着目されているフレイル。中でも身体的フレイルは、尿失禁の危険因子となることが知られている。福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター/臨床研究教育推進部副部長兼特任講師の大前憲史氏は、健康な地域在住の高齢者を対象に尿失禁の一因である過活動膀胱(OAB)と身体的フレイルの関係について臨床疫学的な評価を実施。歩行速度がOABの有病率と関連し、さらに尿意切迫感および切迫性尿失禁とも関連していたと第26回日本排尿機能学会(2019年9月12〜14日、東京)で発表した。

健康な地域在住の高齢者を対象に身体的フレイルと過活動膀胱の関連について解析を実施

 フレイルとは加齢により心身が衰えた状態のことを指す。一般的に要介護の一歩手前の状態で、健康寿命の最終段階と考えられているが、重要なのは早期に発見し適切な支援を行えば健康な状態に回復しうるという点である。フレイルは身体的、精神・心理的、社会的の3つの概念に分類することができるが、いずれか1つの発症を契機として相互に影響し合って悪循環に陥る「フレイルサイクル」という病態も知られている。

 身体的フレイルと尿失禁の関連を調べた研究は幾つか報告されているが、身体的フレイルと過活動膀胱(OAB)の関連について検討したものはほとんどない。大前氏らは、福島県須賀川市在住の健康で日常生活動作(ADL)が自立した75歳以上の高齢者を対象に、独自の質問票調査と身体的フレイル測定〔体格指数(BMI)、筋肉量、筋力、歩行速度〕を行い、身体的フレイルとOABの関連について解析した

トイレに間に合わないかもしれないという恐怖感が尿意を強める

 解析の結果、歩行速度が遅くなればなるほどOABの有病率は上昇することが分かった()。歩行速度は切迫性尿失禁および尿意切迫感とも関連していたが、昼間や夜間の頻尿との関連は認められなかった。さらに、遅い歩行速度は過体重とともにより重症なOABの罹患とも関連していた。

図. 歩行速度と過活動膀胱(OAB)の有病率の関係

(大前憲史氏提供)

 以上の結果から、大前氏は「歩行速度が遅くなることで、実際に失禁があるかどうかにかかわらず、"トイレに間に合わないかもしれない"という恐怖感が高まり、それに伴って尿に対する知覚が増強されるのではないか」と推測した。

 OABは個人の信念や知覚に強く影響を受け、トイレに間に合わないかもしれないという恐怖感は、尿意切迫感の原因として非常に重要で決して無視できないものとして知られる。しかしながら、現状ではOABの診療においてそうした恐怖感に対し十分な配慮がされているとは言い難い。同氏は「恐怖感に焦点を当てたOABに関する次の研究を計画中である」と付言した。

(あなたの健康百科編集部)