2019年10月21日 公開

赤ちゃんも目上の人を理解している?

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 社会的な階級や地位と空間的な位置の高低を結び付けた表現として、「目上の人/目下の人」「トップに立つ/下風に立つ」「上流階級/社会の底辺」などの言い回しがある。言葉だけでなく、視覚的にもオリンピックの表彰式では金メダリストが表彰台の一番高い位置に立ち、会社の組織図を社長を頂点とするピラミッド型で表したりする。こうした上下関係と空間的な位置の結び付きについて、なんと赤ちゃんが既に理解しているという驚きの研究結果を京都大学と九州大学の研究グループが英・王立協会の医学誌 Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences2019; 286: 20191674)に発表した。

通説では言語学習により習得すると考えられていた

 ゴリラ・チンパンジーをはじめサルやオオカミ、ウマなど群れをつくって生活する動物社会には優位性関係(序列、上下関係)が存在し、組織や集団の安定・維持に一定の役割を果たしている。特に、人間は目上の人と目下の人で敬語と丁寧語を使い分けたり、席順に配慮したりするなど、日常的に自分と他人、あるいは他人同士の上下関係を考慮した上で社会生活を営んでいる。

 こうした上下関係と空間的な位置の結び付きは、言語学習を通じて習得するという説が有力で、「上下関係」「人の上に立つ」のような表現を日常的に使う・聞かされる過程で身に付くとされてきた。しかし最近の研究では、体の大きなキャラクターが体の小さなキャラクターに負けて倒される場面を見ると、生後10カ月の赤ちゃんでも驚くことが分かっている。

 研究グループは「言語を習得する前の乳児も、既に上下関係と空間的な位置を結び付けている」との仮説を立て、動画を使った実験で検証した。

キャラクターが競う動画で実験

 対象は生後12~16カ月の乳児18人。まずキャラクターAとBが登場し、画面上に置かれた台の低い位置にAが、高い位置にBが出現する場面を繰り返し見せた。次にAとBが魅力的な物体を取り合い、どちらかが入手する動画を見せて視線の変化や視聴時間を測定した(

図. 実験で使用した動画の流れ

(京都大学プレスリリースより)

 もし乳児が「高い位置にいる=Bが強い」と認識しているとすれば、①弱いはずの低い位置にいるAが物体を取った(勝った)結果を見た場合、驚いて興味を示しより長い時間画面を見る②逆に高い位置にいるBが勝った場合は、当たり前の結果に飽きてしまって時間が短くなる−ことが予想される。

 実験の結果、乳児が画面を見ている時間は、予想通りBが勝利する結末よりもAが勝利する結末を見た場合の方が長かった。この傾向に乳児の月齢、男女、個人による差は見られなかった。

 研究チームはさらに、AとBが出現する台の形を変えたり、モニターの大きさを変えたりして実験を行った。すると、全ての実験で一貫して乳児は「低い位置にいるAが勝つ」結末をより長く見ていた。

 これらの結果を踏まえ、研究チームは「言葉や社会に触れる経験が少ない乳児でも、空間的に上にいる個体は下にいる個体よりも優位(強い)であると予想(期待)していることが示唆された」と結論。「今後は、こうした判断力が持って生まれたものなのか、生後の経験によって習得するものなのかを明らかにしたい」と述べている。

(あなたの健康百科編集部)