2019年11月08日 公開

小児がんの治療は集約化に課題

 国立がん研究センターと国立成育医療研究センターは10月18日付で、0~14歳の小児がん患者と15~39歳の思春期・若年成人(AYA)世代のがん患者に関する全国規模の集計報告書を公表した。その中で、小児がんの治療が治療実績の少ない施設で行われている実態が明らかになった。同月16日に国立がん研究センターで開かれた両センター主催の記者発表会で報告した国立成育医療研究センター・小児がんセンター長の松本公一氏は、「例えば脳腫瘍の診療は緊急を要するケースが多く、治療が極めて難しい。集学的な治療が必要で、診断から治療まで一貫した治療体制で受けることが重要」と述べた。

AYA世代の8割は女性、小児がんは男性が5割

 この報告書は両センターが初めて共同で分析し、作成したもの。がん診療連携拠点病院など452施設を含む844施設を対象に、2016年1月~17年12月の2年間に初回治療を開始したがん患者のうち、小児およびAYA世代に該当する39歳以下のデータを集計した。患者数は小児がんが4,513例、AYA世代がんが5万7,788例の計6万2,301例だった。

 AYA世代の集計はこれまで、20歳を区切りとして「未成年」と「成人」に分類していたが、今回初めて0~14歳を小児、15~39歳をAYA世代と区別した。

 小児がんの内訳を見ると、多い順に白血病(31%)、脳腫瘍(22%)、リンパ腫(9%)だった。AYA世代では、乳がんや子宮頸がん、甲状腺がん、気管支・気管・肺がん、泌尿生殖器がん、消化管がん、その他部位不明がんが80%を占めており、それに脳・脊髄腫瘍、胚細胞性、リンパ腫、白血病などが続いた。患者の男女比を見ると、小児がんの55%が男性だったのに対し、AYA世代がんの78%は女性だった。

症例経験が少ない施設は、大都市圏で多い

 小児がんについて医療機関ごとの診療状況を分析したところ、全国に15カ所ある小児がん拠点病院以外にがんの治療経験が少ない施設でも診療されていることが分かった。詳細を見ると、小児がん拠点病院は2年間で100例以上の患者を診ている施設が過半数を超えているのに対し、がん診療連携拠点病院などの約25%、県推薦病院の約15%は1~3例しか経験がなかった(図)

図.病院種別に見た小児がん患者数

(報道資料より抜粋)

 治療患者が1~3例の施設は146施設(202例)で、最も多いがん腫は脳腫瘍で4割(87例)を占め、次いで胚細胞腫瘍が多かった。

 これらの施設の所在地を調べたところ、関東や東海、近畿などの大都市圏に集中していることが分かった。この結果について、松本氏は「大都市圏には小児がん拠点病院があり、小児がんの診療体制も充実していると考えられているが、集約化が十分でない実態が浮き彫りになった」と指摘。集約化が進まない理由として、「推察にすぎないが、大都市には大学病院を含め医療施設が多いため、そうした施設で診療を受けているのではないか」との見方を示した。

 さらに「小児がんの専門医がいる施設で少数例の治療が行われていれば支障はないが、問題は専門医がいない施設で治療が行われている可能性があること」と述べた上で、「脳腫瘍の診療は緊急を要する場合が多く、極めて治療が難しい。診断から治療まで一貫した治療体制で診療を受けるのが重要で、小児がんの専門医がいる施設での治療が望ましい。今後、実態をより詳細に検証する必要がある」と強調した。

 これに対し、AYA世代のがんは種類が多いため、がん診療連携拠点病院や県推薦病院で多くの患者が治療を受けていた。

(あなたの健康百科編集部)