2019年11月11日 公開

認知症診断は男女別の基準が必要

©Getty images

 言語に関する記憶力は男性よりも女性で優れている。しかし、女性では記憶力の高さ故に従来の認知症診断テストでは、認知症の初期症状が見逃されてしまう可能性が示された。米・University of California, San Diego薬学部のErin Sundermannらは、健忘性軽度認知機能障害(amnestic mild cognitive impairment;amnestic MCI)の診断に利用される記憶テストの基準値を男女ごとに調整すると、男女それぞれ10%ずつMCIの診断結果が変わることをNeurology2019年10月9日オンライン版)に報告した。

女性が多い認知症、男性が多いMCI

 言語記憶とは、言葉や言語情報を記憶しそれらにまつわるエピソードを回想する能力を指す。これまで、女性では生涯にわたり男性よりも高い言語記憶力を持つことが明らかにされている。言語記憶力における男女差は認知症の診断時に考慮されるべきだが、年齢や教育レベルなどに比べて重視されることはほとんどなかった。

 アルツハイマー型認知症患者の3分の2を女性が占める一方で、MCIの発症率は男性の方が高い。この点に着目したSundermann氏らは、言語に関する記憶力が男性より優れていることで、女性では認知症の初期症状が隠されてしまっているのではないかと考えた。

従来の診断法では男女各10%に誤り

 Sundermann氏らは、アルツハイマー型認知症の早期発見と予防法に関する研究ADNIに参加した米・Mayo Clinicの患者985例(女性453例、男性532例)を対象に言語記憶テスト(RAVLT)の結果を解析した。

 男女ごとに定めた基準値と、従来のMCIの基準値を用いて、対象を真陽性(正しくMCIと判定された人)、偽陽性(誤ってMCIと判定された人)、真陰性(正しくMCIではないと判定された人)、偽陰性(MCIなのに誤ってMCIではないと判定された人)の4グループに分類。

 その結果、従来の診断方法に基づくMCIの発症は女性120例(26%)に対し、男性では239例(45%)であったが、性で基準値を調整した後は、女性の10%で偽陰性が、男性の10%で偽陽性が認められた。つまり、女性ではMCIの10%が見逃され、男性では10%が誤ってMCIと判定されていた。

認知症早期の正確な判断が可能に

 これらの結果を踏まえ、Sundermann氏は「言語記憶力に関する男女差の調整は、認知症の診断精度を高めることが示された」と結論している。その上で「認知症治療では、早期からの介入の重要性が指摘されているため、基準値を調整することで、これまで見逃されていた女性の早期MCIを診断できるメリットは大きい。さらに、男性でも誤診により不要なストレスや治療にさらされるリスクを防ぐことができるだろう」と強調している。

あなたの健康百科編集部