2019年11月13日 公開

カマンベールチーズが認知症に効く!?

世界初のヒト対象試験で示された効果とは

 社会の高齢化と密接な関係を持つ認知症。2007年に超高齢社会に突入した日本における65歳以上の高齢者に占める認知症の有病率は、2012年に15%、つまり7人に1人とされ、2025年にはおよそ5人に1人になると推計される。治療薬の開発が進められる中、私たちが生活習慣を見直すことで予防や改善が期待できることも知られている。こうした中、桜美林大学、東京都長寿医療センター、株式会社明治の共同研究グループは、世界で初めてヒトを対象とした試験によりカマンベールチーズ摂取による認知症予防の可能性が示されたことを国際科学雑誌 J Am Med Dir Assoc2019年9月24日オンライン版)に報告、さらにメディアセミナーを通じてあらためて研究結果について解説した。

カマンベールチーズは記憶力や学習能力と関連するBDNFと関連

 認知症といっても、レビー小体型、血管性、アルツハイマー型など幾つかのタイプが存在する。中でも認知症の50〜60%を占めるのがアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)だ。脳内にアミロイドβ(ベータ)やタウといった特殊な蛋白質が蓄積され、正常な脳の神経細胞を破壊して脳を萎縮させるため、記憶障害や言語障害などの症状が現れ、徐々に進行していく。

 これまで世界で報告されているさまざまな研究結果から、認知症はその前段階とされる軽度認知機能障害(MCI;Mild Cognitive Impairment)を早期に発見し、適度な運動や、青魚や乳製品、大豆食品などを中心とした栄養バランスを見直すことなどで予防効果が期待できる。

 乳製品については、アルツハイマー病を再現したマウスの研究により、白カビ発酵チーズ(カマンベールチーズ)が脳のアミロイドβを減少させ、脳の栄養因子として主に海馬に多く存在するBDNFを増加させることなどが明らかになっている。BDNFは、記憶力や学習能力などの認知機能に関わる神経栄養因子であり、加齢に伴い低下する上、認知症やうつ病などで低下すること、適度な運動により増加することが明らかになっていたが、ヒトにおいて食品摂取による影響については解明されていなかった。

カマンベールチーズ摂取で脳の栄養分「BDNF」が増加

 今回、共同研究グループはカマンベールチーズ摂取によるBDNFの増加との関連に着目。ヒトを対象とした世界初の研究に取り組んだ。対象は、東京都在住の70歳以上の高齢女性689人のうち、MCIと判断された71人。71人をランダムに2つのグループ(カマンベールチーズ摂取群とプロセスチーズ摂取群)に分け、それぞれのグループで1日2ピースのチーズを3カ月間摂取し、血中BDNF濃度を測定した。その後、チーズを摂取しないウオッシュアウト期間3カ月を経て、摂取するチーズを入れ替えて同様の研究を行った。

 その結果、血中BDNF濃度は、プロセスチーズ摂取群が2.66%の低下を示していたのに対し、カマンベールチーズ摂取群では6.18%の上昇が確認され、両群を比較したところ統計学的に有意差が認められた()。

 図. 血中BDNF濃度の変化

 

J Am Med Dir Assoc 2019年9月24日オンライン版)

 今回の研究結果から共同研究グループでは、MCIが認められた高齢者において、カマンベール摂取によるBDNFの増加作用が示され、認知機能低下の抑制や、ひいては認知症予防の可能性が強く示唆されたと結論している。

総人口に占める65歳以上の高齢者の割合を高齢化率という。高齢化率が総人口の7%以上で「高齢化社会」、14%以上で「高齢社会」、21%以上で「超高齢化社会」と定義され、2019年9月15日時点の日本の高齢化率は28.4%とされる。

(あなたの健康百科編集部)