2019年11月26日 公開

不妊治療中の女性に朗報!

“排卵済み”の卵胞から体外受精に成功

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 日本では、女性の社会進出に伴う晩婚化、育児と仕事を両立するための環境整備の遅れなどにより、第一子出産年齢が高齢化しており、妊娠を望みながら不妊に悩むカップルが少なくない。その一方で、医療技術の進化に伴い体外受精や顕微授精、精子・卵子の凍結保存などの生殖補助医療によって生まれる子供は増えており、2014年には全出生児の4.7%を占めている。そうした中、千葉大学大学院などの研究グループから、体外受精の成功率アップが期待されるうれしい研究結果が報告された。

卵子の数には限りがあり、排卵された卵子が最良とは限らない

 近年、不妊治療を受ける人が増加している。タイミング法や排卵誘発法でうまくいかない場合は、次のステップとして体外受精を行う。精巣で約2カ月かけてつくられる精子と違い、卵子の基になる原子卵胞の数には限りがあり増やすことができない。また、精子は射精後も数日間生き延びられるのに対し、排卵後の卵子の寿命は6〜24時間と短い。そのため、体外受精に当たっては限りある卵子を効率良く取り出すことが重要になる。

 通常の排卵周期では、卵巣内で成熟した卵胞(卵子の基になる卵母細胞を含む細胞の集まり)のうち最も発育した主席卵胞が破裂して卵胞外に卵子が1つだけ排出(排卵)され、その卵子は卵管を通って子宮に移動し成長を続ける。それ以外の卵胞は発育が停止し消失する。

 一般的な体外受精では、18mm前後に成長した主席卵胞を破裂前に取り出し、人工的に受精させてから子宮に戻す(胚移植という)。しかし、卵胞の成長にはばらつきがあるので、必ずしも大きく成長した主席卵胞から取り出した卵子が最良とは限らず、比較的小さな卵胞から良好な卵子が採取されることもあるという。

 また、卵胞は一度破裂すると卵子が押し出されてしまい、卵子が取り出せない"排卵済み"の状態になると考えられていた。

 研究グループは、破裂した卵胞の全てが排卵しているわけではないと考えた。そこで、既に破裂した卵胞から卵子を取り出し、受精能力があるかどうかを調査した。

子供が生まれる割合は通常の人工授精に匹敵

 対象は、不妊治療中の女性1,071人。超音波検査で破裂が確認された587個の卵胞から255個(43.4%)の卵子回収に成功した。これは、破裂前の主席卵胞での回収成功率(83.0%)の約半分に上った。255個の卵子のうち206個(80.8%)が生きており、194個(94.2%)は受精できる状態だった。

 採取した卵子を用いて体外受精を行ったところ、68個(26.7%)が良質な胚盤胞まで成長し、28人(11.0%)の健康な新生児が出生した。これは、通常の体外受精の生児出生率(12.1%)に匹敵する成績であった。

 これらの結果を踏まえ、研究グループは「"排卵済み"と考えられていた卵胞から健康な卵子が取り出せたことは、これまでの体外受精のやり方に見直しを迫る発見だ。使用できる卵子数が増えることで、体外受精による妊娠率をさらに高めることが期待できる」と結論している。研究の詳細は、自然科学誌Scientific Reports2019; 9: 15041)に発表されている。

(あなたの健康百科編集部)

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