2019年12月05日 公開

電気で潤うコンタクトレンズを開発

東北大学プレスリリース

 東北大学大学院工学研究科教授の西澤松彦氏らの研究グループは、新たに開発したハイドロゲル素材を用いたコンタクトレンズの実験で、通電によってレンズ内に水流を発生させると、乾燥速度が低下することを実証。さらに体や環境に優しいバイオ電池を搭載し、外部からの電力供給を必要としない有機物のみで構成された自己保湿型の抗ドライアイレンズの実現にも成功したという。詳細はAdvanced Materials Technologies(2019年11月28日オンライン版)に発表された。

レンズ内に電気浸透流を発生させて保湿

 コンタクトレンズは単なる視力矯正用途にとどまらず、美容・ファッションとしても普及しており、今や日本人の5人に1人が使用している。今後、生体モニタや通信・表示機能を有するスマートレンズが登場すると、コンタクトレンズの役割がさらに拡大していくと予想されている。

 一方で、ソフトコンタクトレンズの装用は涙の蒸発を促進するため、ドライアイの症状を誘発または深刻化する傾向がある。ドライアイは不快感によるQOLの低下だけでなく、眼球表面の炎症や損傷、視覚障害の原因となることもあるため、コンタクトレンズの保湿技術の開発が強く求められている。

 このたび西澤氏らは、電気浸透流を効率良く発生させいろいろな形に加工しやすい新たなハイドロゲル素材を開発。研究により、この素材を用いたコンタクトレンズ内に電気浸透流を発生させることでレンズの保湿ができることを証明した。これまで、コンタクトレンズ内部に発生する浸透流と保湿性能との関連が指摘されたことはなかった。

コンタクトレンズに電池を搭載

 さらに西澤氏らは、コンタクトレンズに電池を搭載することで、外部からの電力供給を必要としない自立型デバイスの可能性を探索。2種類のバイオ電池を使って検討した。バイオ電池は全て有機物でつくられており、生体や環境に優しい。

 電池の出力電流の経時変化を見ると、徐々に電流が低下していた。電池自体の耐久性は2種類とも12時間以上と分かっていたため、ここで生じた電流低下はコンタクトレンズが徐々に乾燥することにより抵抗値が大きくなったのが原因と考えられた。

 しかし、自然乾燥の場合に比べると、電池による発電によって著明に乾燥速度が低下していることが示され、保湿効果が確認できた。この実験は、吊り下げたコンタクトレンズを用い比較的乾燥した環境(湿度40%)で行ったため、眼球に装着した状況では、さらに効率良く乾燥を防げることが想定されるという。

 今回の研究から、コンタクトレンズ内に電気浸透流を発生させると保湿が可能であることを証明し、ドライアイの緩和が期待できることが示された。電池を直接搭載し、外部からの給電を必要としない自己保湿レンズの開発にも成功した。眼孔内の水流の制御はドライアイ症状の緩和だけでなく、目薬の徐放制御、房水(眼球を満たす液体)排出による眼圧制御においても重要である。同氏らが開発した電気浸透流を利用する新技術が、点眼器や注射器に並ぶ技術として発展していくことが期待される。

(あなたの健康百科編集部)