2019年12月13日 公開

薬剤師の介入で20兆円の医療費を削減

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 高血圧は、重篤な疾患や死亡のリスクとなる。しかし、高血圧患者が多い日本では、治療効果を得られている割合は3~4割にすぎないといわれる。また、医療費の増加と医師の不足も深刻な社会問題となっている。こうした背景を受け、京都大学特定講師の岡田浩氏ら(研究当時はカナダ・アルバータ大学所属)は、薬剤師が高血圧治療に介入することで治療効果を向上させ、医療費を削減できるのではないかと考えた。同氏らが考案したモデルによる試算の結果、薬剤師が25年間介入することで約790万人の高血圧患者の予後が改善し、約20兆円の医療費が節約されると推定された(Hypertension 2019; 74: e54-e55)。

介入で収縮期血圧が18.3㎜Hg下がると仮定

 カナダ・アルバータ州で2015年に行われたRxACTION研究では、薬局薬剤師が高血圧治療(降圧薬の処方や検査、患者指導など)に積極的に介入することで、医師だけが治療に当たる従来の方法よりも優れた結果を得られ、医療費が削減できると報告している。岡田氏は、マルコフモデルによる計算式を考案し、RxACTION研究の結果を基に、日本でも高血圧治療に薬剤師が介入した場合の効果を検討した。

 検討では、従来の高血圧治療を行った場合と薬剤師が降圧薬の処方や検査、患者教育などの積極的な介入を行った場合とで、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、心不全、狭心症)および腎障害の長期の発症リスクを算出し、比較した。疾患の発症リスクはフラミンガムスコアを用いて計算した。

 RxACTION研究の結果に基づき、「薬剤師の積極的介入により収縮期血圧が18.3mmHg低下する」と仮定。全体的な増分費用効果(既存の治療を別の治療に切り替えた場合に増加または減少する費用)を推定するために、健康面での結果、費用、QOLを指標に取り入れた。費用には直接的な医療費の他、薬剤師による介入の実施に関わる費用も含まれた。 

790万人が死亡を回避し、22兆円が節約できる

 国民医療費の動向(厚生労働省、2014年)によると、日本の総医療費は42兆円で、高血圧関連では薬剤費1.85兆円(患者数1,010万8,000人)、心臓病が1.82兆円(同19万3,800人)、虚血性心疾患が743億円(同7万5,000人)、脳血管疾患が1.78兆円(同25万3,400人)、腎不全が1.53兆円(同29万6,000人)としている。

 日本の高血圧患者の40%がコントロール不良で、そのうち半数に薬剤師による積極的介入を行ったと仮定すると、25年の介入により、心血管疾患の発症リスクは21%低下し、1人当たりの寿命を0.3年、質調整生存年(Quality-adjusted life year;QALY、健康な状態で生存できる年数)を0.4年延長し、生涯の医療費を71万2,394円削減できると算出された。

 これを全人口に当てはめると、790万人が高血圧による死亡を回避でき、総額で22.5兆円(185憶カナダドル)の医療費を削減できると推算された。

 岡田氏は「薬剤師による高血圧治療への積極的な介入は、治療そのものがもたらす効果だけでなく、医療費削減の効果もあることが示された。特に、コントロールが良好でない患者が多い国では、介入効果がより高まる。これらの結果は、日本の公衆衛生において非常に重要な意味を持つ」と述べている。

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(あなたの健康百科編集部)