2019年12月27日 公開

人工筋肉の寿命が100倍に

新エネルギー・産業技術総合開発機構/中央大学プレスリリース

 高齢化が進んでいる日本では、労働力の不足や身体機能が低下した高齢者の寝たきり防止などが問題になっている。それらの解決策の1つとして、装着すると腰に負担をかけずに重い荷物を軽々と持ち上げることができるパワードスーツや、足腰が弱った人の歩行支援補助具など、人工筋肉が私たちの生活の中で活躍する場面が増えている。油圧式やモーターを採用したハイパワーなものもあるが、ゴム製人工筋肉は軽量ながらパワーが強く、しかも扱いやすく安価という利点から、幅広い領域で実用化に対する期待が寄せられている。その一方で、ゴムという特性上、亀裂が生じやすく寿命が短いという宿命的な欠点もある。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と中央大学の研究グループは、亀裂の広がりを防ぐゴム製人工筋肉の作製に成功、寿命をこれまでの最大100倍延長したと報告した(中央大学プレスリリース)。

ゴムの特性を利用してゴムの切れやすさを改善

 研究グループは、これまでに軸方向(ゴムチューブの長さを示す方向)に繊維を強化し、空気圧で伸縮させる「軸方向繊維強化型空気圧ゴム人工筋肉」を開発している。通常のゴムチューブは空気を入れると風船のように全方向に膨らむが、このゴム製人口筋肉は軸に沿っては膨らまず、半径の方向にのみ膨張する。その結果として、軸方向に強く収縮する力が生じ、効率的にパワーが得られる。しかし、ゴムが大きく変形するため亀裂が発生しやすく、やがて破断してしまう。これは、ゴム分子をつなぐ鎖の最も弱い部分が変形による圧力で切断されると、弱い部分から順番に切れてしまうことで起こる現象である。

 研究グループは、伸ばすと結晶化して強度が高まるというゴムの特性「伸張結晶化」に着目。ゴム自身がつくり出す結晶層により亀裂の広がりを食い止める新たな軸方向繊維強化型人工筋肉の開発を目指し、結晶層を維持する状態で常に伸張したモデルの作製に成功した。同グループのテストでは、これまでの人工筋肉が数百〜数千回の伸縮で破断していたのに対し、この新しいモデルは80万回を超える伸縮が可能であった。実際の使用で1分間に2回伸縮すると仮定すると、1日5時間の稼働であれば1年半程度の継続使用が可能という。

 NEDOと中央大学では、長寿命化した人工筋肉を研究グループが手がけているアシストスーツの新型に適用するとともに、深海や月面など過酷な環境で使用されるポンプへの応用も視野に入れている。

(あなたの健康百科編集部)