2020年01月09日 公開

肩・肘の投球障害を予防して球速アップ!

年初から始めたいYKB-9

©Getty images

 プロ・アマを問わず、野球選手が投球動作で肩や肘を痛めることは少なくない。中でも、トーナメント形式で短期間に決勝まで複数の試合をこなす学生野球ではエースピッチャーへの負担が大きく、投球障害はその後の選手生命を左右するけがにつながりかねない。そのため、今年(2020年)の第92回選抜高等学校野球大会から投球数制限が導入されることになっている。投球時にかかる体への負荷によって引き起こされる野球肘や野球肩は、成長期にある学童野球の子供たちにおいてリスクが高く、特に小学3〜4年生は要注意だといわれている。こうしたことから、公益財団法人全日本軟式野球連盟の「学童野球に関する投球数制限のガイドライン」でも、①全力投球は1日70球以内②練習は1週間に6日以内・1日3時間を超えない③シーズンオフを少なくとも3カ月設ける④練習前後のウオーミングアップ、クーリングダウンは少なくともそれぞれ20分以上行うーことなどの指針を示している。

攻めの戦略で投球障害を起こしにくい体づくり!

 投球障害の防止に関する一定の指針は打ち出されているものの、どの程度の負荷で障害が起こるかは個々の子供によって異なり、ひとたび肩や肘に投球障害が生じた場合、当面は野球ができなくなってしまう。投球障害の発生自体を防ぐには、投球数や練習制限などの「守り」だけでなく「攻め」の戦略、つまり、投球障害を起こしにくい体づくりが重要だ。

 投球障害を予防するため、投球に必要な部位や動作を強化することを目的とした投球障害予防プログラムが「Yokohama Baseball-9(YKB-9)」だ。YKB-9の効果についてはこれまでにも検証が行われ、投球障害の発生率が低下することが示されている。しかし、予防には継続が鍵となることから、内容を修正・厳選し、一度覚えれば子供が1人でも続けられる9つのトレーニングで構成される新たなプログラムにアップデートされた。

(YouTube「投球障害予防プログラムYKB-9のご紹介」より)

 YKB-9の開発に当たったトヨタ記念病院(愛知県)リハビリテーション科理学療法士の坂田淳氏らの研究グループは、アップデートしたYKB-9の投球障害予防効果を検証した。対象は9〜11歳の学童野球選手237人で、YKB-9を行うグループと行わないグループに分け、投球障害発生率を1年間追跡調査するとともに、実施前後で投球時の球速についても比較した。

 その結果、1,000人当たりの投球障害発生率は、YKB-9を行わなかったグループの3.1人に対し、行ったグループでは1.7人と、およそ半減することが明らかになった。また、YKB-9を行ったグループでは球速もアップしていたという。

 この研究成果は米・スポーツ医学誌 American Journal of Sports Medicine2019; 47: 2709-2716)に掲載されている。投球障害の予防と球速向上が期待できるYKB-9、ぜひシーズンオフに当たるこの時期からウオーミングアップやトレーニングに加えておきたいプログラムだ。

子供たちが健全に野球を楽しめるよう指導者への啓発を実施

 坂田氏は、学童野球の指導者を対象とした神奈川学童野球指導者セミナーに参画している。同セミナーの目的は、学童野球に参加する小学生がスポーツ障害を抱えることなく健全に野球競技を楽しめることと、学童野球の指導者が適切な医学知識を持って子供たちを導くこと。

 3回目を迎える同セミナーは「少年期のスポーツ障害を予防する」と題し、今年1月19日に開催予定。埼玉西武ライオンズから海外FA権を行使し、メジャー入りが注目される秋山翔吾選手、全日本野球協会会長で野球日本代表・侍ジャパン総責任者の山中正竹氏の登壇も予定しているという

神奈川学童野球指導者セミナー
第3回「少年期のスポーツ障害を予防する」のお知らせ
◆日時:2020年1月19日(日)9:30~15:30(9:00開場)
◆開催場所:横浜市西公会堂(横浜市西区岡野1-6-41)
◆参加資格
 1. 神奈川県内の学童野球チームに関わる指導者、連盟役員の方々
 2. 学童野球チームに関わる保護者の方々
 3. 医師、理学療法士、柔道整復師、鍼灸マッサージ師、アスレティックトレーナー、スポーツ医科学研究者、その他野球界の発展に寄与する野球関係者(神奈川県外の方の参加も歓迎)
◆定員:500人
 ※定員になり次第、受け付け終了
◆参加費:2,000円(テキスト代、受講修了証を含む)
 ※前回セミナーの受講修了証提示で1,500円
プログラム
 1.「投球が肘肩に与えるストレスから投球制限を考える」
 講師:西中直也先生(昭和大学スポーツ運動科学研究所)
 2.「子どもたちに必要な体力-投球動作を動作学・スポーツ運動学から紐解く-」
 講師:吉田千城先生(横浜ベースボール整骨院)
 3.「子どもたちに必要な体力-上手に、そして丈夫になるために-」
 講師:坂田淳先生(トヨタ記念病院リハビリテーション科 理学療法士)
 4.「ラグビーとスポーツマンシップ」-他競技に学び野球の未来を考える-
 講師:大関信武先生(日本スポーツ医学検定機構代表理事)
 5.「子供の野球肘を見逃さない!-野球肘検診の必要性-」
 講師:山崎哲也先生(横浜南共済病院スポーツ整形外科部長)
 6.「日本野球界現状把握」
 講師:未定
 7. 特別講演「勝負と指導」
 講師:斎藤隆氏(元プロ野球選手/メジャーリーガー)
※お申し込み・お問い合わせは「神奈川学童野球指導者セミナー」公式サイトまで

(あなたの健康百科編集部)

■関連記事

野球少年の肘を守れ! セルフチェックで早期発見を

野球肘を防ぐ「YKB-9+」、セルフチェックも紹介