2020年02月06日 公開

学校も家庭も孤独な戦場

アトピー性皮膚炎の子供たち

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 アトピー性皮膚炎は、身体的にも心理的にも患者の負担が大きな疾患である。大人の患者でも持て余すその状況が、患児にとってはなおさらつらいものだろうことは容易に想像がつく。しかし、これまでアトピー性皮膚炎を持つ子供たちの心理面に焦点を当てた研究はなかった。そこで香港の研究者らがまだ幼く自ら説明することの難しい患児の生の声を、インタビューと彼らが描いた絵から読み取る研究を行った(Health Soc Care Community 2019年12月12日オンライン版)。その結果、アトピー性皮膚炎患児は症状のつらさに加え、見た目による差別やいじめ、保護者からのプレッシャーを受け孤独を感じ傷ついていることが明らかになった。

「勉強しなさい」で症状が悪化

 対象は中等度〜重症のアトピー性皮膚炎患児17人(女児8人、男児9人、8〜12歳)。A4サイズの紙2枚に12色の色鉛筆を使って、2種類の絵①今の気持ちを自由に描く②同心円の中心に自分を、自分にとって重要度が高い人ほど内側に描く− をそれぞれ描いてもらった。その後、インタビューを行って絵についての説明を聞き取り、得られた証言を基に心理状態を分析した。

 その結果、アトピー性皮膚炎患児は、症状によって日常生活の一部が制限されることへの強い不満を持ち、治療してもなかなか治らないことに無力感を抱いていることがわかった。自分の外見については「赤く腫れている」「剝がれた皮膚で粉まみれ」と表現し、学校ではそれが原因でいじめられていると認識していた。教師に対する期待感も薄く、「先生に『髪を洗わないからフケだらけ』と言われた。学校に行きたくない」(12歳女)との訴えもあった。学校以外でも「見知らぬ親子が僕の顔を見て、まるでお化けに出会ったかのように逃げていった」(11歳男)など、疾患に対する世間の無理解に傷ついている様子もうかがえた。

 では、家庭は子供たちにとって安心できる場所かというと、そうとは言い難い実情を同研究は示している。保護者は症状の悪化を防ぐ目的で子供たちにあれこれ指導するが、「私がどんなに痒くてつらいかを知らないくせに、パパもママも『かいちゃ駄目』と怒るだけ」(9歳女)と、彼らの目にはそれがなんの助けにもならない叱責と映っていた。また、一部の保護者は努力していい学校に進学することがアトピー性皮膚炎がもたらす差別から子供を守ると信じ、勉強するよう促すが、その態度が子供たちには強いプレッシャーとなり、17人中9人がテストのたびに症状が悪化すると述べている。

 患児の自己評価は総じて低く、無力感や孤独感に苛まれていた。アトピー性皮膚炎であることは「不公平」と複数の子供が感じており、「普通の人になりたい」(12歳女)と述べる子もいた。

 アトピー性皮膚炎患児の抱える劣等感や自尊心の低さは、病像をさらに悪化させる可能性がある。研究者らは、特に中国人は滑らかで白い肌を高く評価することも、アトピー性皮膚炎の子供たちが社会に受け入れられにくい状況をつくる要因の1つになっていると推測している。また、今回得られた患児自身の言葉から、医療従事者は子供たちが生きる世界(家庭、学校、地域社会)における課題を見つけ出し、実践的な戦略を立てることが可能であるとしている。

(あなたの健康百科編集部)