2020年02月21日 公開

震災避難者の健康、公営住宅入居者に要注意

東日本大震災避難者の長期調査

 東日本大震災(2011年3月11日)から間もなく9年となる。震災や津波で住宅を失った被災者の多くは避難者となり、仮設住宅への入居を余儀なくされた。仮設住宅入居者の健康については、これまでも研究されてきたが、このほど草間太郎氏ら東北大学大学院歯学研究科のグループによって、7年間におよぶ長期調査の結果が公表された(日本公衆衛生雑誌 2020; 67: 26-32)。注目されるのは、仮設住宅を離れ、住環境に恵まれているはずの災害公営住宅に移住した避難者の健康状態の悪さである。

健康状態が悪いと感じている人は全体的には減少傾向

 研究グループは、2011~17年度の7年間にわたり、宮城県内の仮設住宅および災害公営住宅に入居している20歳以上の男女を対象に、健康調査を行ってきた。対象者は延べ約18万人に上る(同一対象者を追跡したものではない)。調査は自記式調査票を用いて、主観的健康観などを聞いた。主観的健康観は「体調はいかがですか」という質問に「大変よい」「まあよい」と回答した人を「主観的健康観が良い」、「あまり良くない」「とても悪い」と回答した人を「主観的健康観が悪い」と判定した。

  東日本大震災後、多くの避難者が仮設住宅に入居した。仮設住宅には2つのタイプがあり、民間の賃貸住宅に被災者が入居し自治体が賃料を補助したのが「みなし仮設住宅」、特定の地域に集約的に建設されたのが「プレハブ仮設住宅」。一方、仮設住宅からの転出が進む中で、自ら住宅を確保することが困難な人向けに安い住宅で提供される住宅が「災害公営住宅」である。

  住宅別の対象者数(調査票の回収率)は以下の通り。

・みなし仮設住宅:2011年度2万925人(73.4%)→2017年度1,837人(47.5%)

・プレハブ仮設住宅:2012年度1万8,422人(58.6%)→2017年度1,174人(45.5%)

・災害公営住宅:2015年度4,981人(61.2%)→2017年度8,833人(58.2%)

公営住宅入居者の健康状態の把握とサポートを

 解析の結果、主観的健康観が悪いと判定された人の割合は、みなし仮設住宅入居者では徐々に低下していたが、プレハブ仮設住宅では変化がなかった。災害公営住宅入居者では仮設住宅入居者に比べ、主観的健康観が悪い人の割合が高かった。

・みなし仮設住宅:2011年度22.5%→2017年度18.9%

・プレハブ仮設住宅:2012年度21.8%→2017年度22.3%

・災害公営住宅:2015年度25.6%→2017年度24.3%

 さらに統計学的に信頼性の高い解析を行ったところ、全例において主観的健康観が悪い人は、調査年度が新しくなるほど減少する傾向が認められた(2011年度に対して2017年度は25%のリスク低下)。一方、災害公営住宅入居者はみなし仮設住宅入居者に比べ、主観的健康観が悪い人が多いことが判明した(20%のリスク増)。

 今回の結果から、東日本大震災の避難者の健康状態が全体的には改善しつつあることが示唆された一方、災害公営住宅入居者の健康状態の悪さがクローズアップされた。災害公営住宅には、高齢者や生活困難者など健康問題のリスクが高い人が入居するケースが多いという(今回の調査では、平均年齢が63歳と3つの住宅群の中で最も高かった)。

 研究グループは、災害公営住宅はプライバシーが保たれる半面、暮しの様子が見えにくいなどの短所もあると指摘。行政だけでなく、郵便局員や新聞配達員、宅配業者などとの連携を進めて、入居者の健康状態の把握とサポートを行っていく必要があると提言している。

あなたの健康百科編集部