2020年03月19日 公開

公共交通機関利用者は歯科に通院しやすい

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 所得が低い人ほど歯科医院を受診しないという健康格差については世界中で報告されているが、日常的なバスや電車などの公共交通機関の利用と歯科受診の格差の関係については、これまで検討されていなかった。東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の木内桜氏らは、高齢者を対象とした調査を実施。その結果、日常的に公共交通機関を利用している人では所得による歯科受診の格差は小さかったとCommunity Dent Oral Epidemiol(2020; 48: 109-118)に報告した。

低所得者ほど歯科受診頻度が低い

 虫歯や歯周病などの口腔疾患は患者数が世界一多い疾患として知られており、歯科医院に通院しやすいことは、歯や口の健康を保つために重要である。日本には国民皆保険制度があるが、低所得者ほど歯科受診頻度が低いという健康格差が存在する。公共交通機関の利便性も歯科通院に関わる重要な要素の1つだが、日常的な公共交通機関の利用と歯科受診格差を検討した研究はこれまでになかった。

 そこで木内氏らは、2016年に行われた日本老年学的評価研究機構(JAGES)調査に回答した地域在住高齢者(65歳以上)のデータを使用して研究を実施。1万9,664例(男性9,118例、平均年齢73.8歳)を解析対象として、日常的な公共交通機関利用と歯科受診の所得による格差について検討した。

 同氏らは「直近の歯科治療受診」を、①3年以上前または受診したことがない(0点)②1〜3年以内(1点)③6〜12カ月(2点)④6カ月以内(3点)−の4カテゴリーに分けて、点数化した。また、日常的な公共交通機関利用(している/していない)と等価所得(100万円ごとの連続値)についても併せて検討。さらに年齢、教育歴、婚姻歴、主観的な健康状態、歯の本数、近所にバス停や駅があるかどうか、車の利用、歯科医院密度などの背景も調べて解析した。

交通の便を良くすると歯科へのアクセスも良好に

 検討の結果、高所得者、女性で多く歯科医院を受診していることが分かった。公共交通機関利用者で6カ月以内に歯科医院を受診した人は男性で45.5%、女性で56.1%であった。背景を調整しても、日常的に公共交通機関を利用している人はしていない人より歯科医院を受診しており、高所得者の方が低所得者より受診していた。また、日常的に公共交通機関を利用している人の間では、所得による歯科受診格差は小さい傾向にあったが、男性では特に差が小さかった。

 木内氏らは「所得による歯科受診の格差は公共交通機関利用者の間で小さく、特に男性において格差が小さかった」と結論。「今回の結果から、地域の人々が公共交通機関を利用しやすい環境を整えることで、特に男性の歯科医院へのアクセスを向上させる可能性がある」と考察している。

 現在、日本では人口減少が進んでいることから公共交通機関は縮小傾向にある。しかし、英国やカナダでは、高齢者に無料の敬老パスを導入したことによって公共交通機関利用が増加し、健康への良い影響が報告されているという。日本でも同様に、交通の便を良くすることが良好な歯科へのアクセスにつながる可能性があると考えられる。

(あなたの健康百科編集部)